Search

KDDIはなぜUQ mobileを統合するのか ターゲットはY!mobileと楽天モバイル? - ITmedia

 KDDIは、10月1日に傘下のUQコミュニケーションズが運営する「UQ mobile」を統合することを発表した。UQコミュニケーションズは会社を分割し、UQ mobile事業をKDDIに移管する。WiMAX 2+のインフラや対応するルーターに関する事業については、UQコミュニケーションズに残る。

 UQ mobileの統合は、サブブランドを強化するのが目的だ。auとUQ mobile、2つのブランドの関係性は、ソフトバンクとY!mobileに近くなるといえる。統合後には、どのような変化があるのか。今の市場環境やUQ mobileの歴史的経緯を踏まえつつ、KDDIの狙いを読み解いていきたい。

UQ mobile KDDIは、10月1日にUQ mobileの事業をUQコミュニケーションズから継承する

MVNOの拡大を目指して設立されたUQ mobileがたどったサブブランド化の歴史

 派手なプロモーション展開もあり、UQコミュニケーションズのMVNOとして認知度も高いUQ mobileだが、2014年にブランドを発足させたのは、KDDIの100%子会社であるKDDIバリューイネイブラーになる。UQコミュニケーションズがユーザーの拡大を狙って立ち上げた新規事業ではなく、KDDI自身がMVNOの拡大を目的に立ち上げたブランドだったというわけだ。

UQ mobile UQ mobileは、2014年にKDDIの完全子会社であるKDDIバリューイネイブラーによって設立された

 KDDI自身でMVNOを立ち上げた背景には、当時の劣勢があった。接続料や3Gの通信方式の違いなどもあり、MVNOのほとんどはドコモ回線を採用していた。今ではauやソフトバンクの回線を選択できるMVNOも増えているが、当時はほぼ“ドコモ一択”。mineoはau回線を借りてサービスを開始していたが、auを選ぶこと自体が他社との差別化になっていたほどだ。KDDIバリューイネイブラーは、ここに対抗するために立ち上げられた会社。自ら回線を借り、MVNEに対するお手本として展開したのがUQ mobileだった。

UQ mobile KDDIバリューイネイブラーは、ほぼドコモ回線一択だったMVNO市場に、au回線を増やす目的で設立された経緯がある。UQ mobileはそのお手本といえる存在だった

 とはいえ、当時はプロモーション展開や販路の拡大も控えめで、ユーザー数は伸び悩んでいた。他のMVNOに対抗したい一方で、移るユーザーが増えると、ARPU(1ユーザーあたりの平均収入)を押し下げてしまう。こうしたジレンマはなかなか解消されず、事業運営そのものをUQコミュニケーションズが受け継ぐことになる。UQ mobileを継承した約半年後の2016年6月には、同社の代表取締役社長、野坂章雄氏(当時※現在は退任)は「営業協力ではそれほど大きな展開にならず、もう一段何かしないといけないとなった」と語っている。

 UQコミュニケーションズに移管されてからは、ある程度、KDDIから独立したMVNOとして、徐々に拡大のスピードを上げていった。料金プランの整理、拡充や、端末ラインアップの強化、家電量販店や一部auショップを中心としたリアルな店舗での販路拡大などを地道に行った上で大規模なプロモーションをかけた結果、ユーザー数は急増。他のMVNOと比べ、ピーク時の通信が速い点も好評を博していた。ユーザー数は、2020年1月26日時点で200万を突破。2019年9月末には、楽天モバイルに次ぐシェア2位(MM総研調べ)につけている。

UQ mobile 今ではおなじみとなった「三姉妹」を起用したCMを開始したもの、運営がUQコミュニケーションズに移管されたあとのことだ
UQ mobile 料金プランや端末ラインアップも強化し、MVNO市場での存在感は急速に高まっていた

 この動きと並行して、KDDIはUQ mobileをauのサブブランドと位置付けるようになっていった。方針を明確に示したのは、2017年のこと。当時の代表取締役社長、田中孝司氏(現・代表取締役会長)は、決算説明会で「au+MVNOで、モバイルIDベースの成長を目指す」と宣言した。UQ mobileに加え、傘下のJ:COMやビッグローブの展開しているMVNOも含めたグループ全体での拡大に軸足を移すというが、田中氏の発言のポイントだ。UQ mobileのKDDIへの統合は、この動きを強化するものと捉えることができる。高橋氏は、「今まではauとUQの経営は別だった。それぞれのディシジョンメーキングをそれぞれでやっていた。そこは大きく変わる」と語る。

UQ mobile 2017年5月に開催された決算説明会では、サブブランドとしての位置付けが明確に打ち出された

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう

柔軟な料金設定や営業体制の強化が統合のメリット

 KDDIが直接運営するメリットの1つは、auとの差別化をにらみながら、料金設計をより柔軟にできるところにありそうだ。高橋氏は「両ブランドの特色を生かし、ニーズに合った分かりやすい料金を提供する」と語る。一足先にY!mobileをサブブランドと位置付けてきたソフトバンクを見ると、すみ分けはより明確だ。メインのソフトバンクブランドは、大容量プランの「メリハリプラン」と、フィーチャーフォンからの乗り換え層に向けた「スマホデビュープラン」に特化しており、段階制の「ミニフィットプラン」は陰に隠れている。

UQ mobile ソフトバンクはミニフィットプランをあまり表に出していない。Y!mobileとのすみ分けを図るためだ

 ミニフィットプランは、2GBを超えただけで上限に達するため、ユーザーが選択するメリットも少ない。代表取締役社長兼CEOの宮内謙氏が「小容量から中容量はY!mobile」と語っているように、メリハリプランやスマホデビュープランにフィットしないユーザーは、Y!mobileで受け止めていることが分かる。高橋氏は具体的な料金プランへの言及は避けたものの、「安心して大容量を使っていただくお客さまは、auを中心に進める。あまり使いにならない方が、低料金で品質が安定しているUQをお選びになる」と語る。2ブランドを前提に、料金プランを見直す可能性もありそうだ。

UQ mobile UQ mobile統合の狙いを語る高橋社長(写真提供:KDDI)

 営業部門や管理部門を統合することで、経営環境の効率化も測れる。高橋氏は「サービスやサポート体制の強化、営業の統合で、グループID増を狙う」と語る。コストダウンはもちろん、auとUQ mobileの双方を扱うショップを増しやすくなるのは、KDDIがUQ mobileを抱えるもう1つのメリットだ。

 もともとUQ mobileは通信速度の速さには定評があるものの、やはりMVNOのため、auとまったく同じというわけにはいかない。UQ mobileの設備はそのままKDDIに移管されるというが、統合で1つの会社になることで、相互接続する帯域は無尽蔵に増やせる。ユーザーがピーク時に速度を心配する必要がなくなるというわけだ。

 統合後は、UQ mobile回線の上で、au IDにひもづいたサービスを積極的に展開していく構えだ。高橋氏は、これを「新しい価値」としながら、「auだけで進めるのではなく、auにもUQにも、MVNOのビッグローブやJ:COMにも、ライフデザインサービスをしっかり組み込んでいく。(そのために)上位レイヤーはオープン化を進めている」と語る。現時点でも、au IDはUQ mobileユーザーに提供されており、au PAYやauスマートパスプレミアムに加え、au HOMEをベースにした「UQ×with HOME」などのサービスは利用できるが、連携は一部にとどまる。具体策は「近日お話ししたい」(同)というが、KDDIへの統合を機に、対応するサービスは確実に増えるはずだ。

UQ mobile オープン化したau IDを活用し、ライフデザイン事業をUQ mobile回線上でも展開する。なお、au PAYなど、一部のサービスは提供済みだ

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう

ターゲットはY!mobileと楽天モバイル? 統合の背景とKDDIの狙い

 KDDIがUQ mobileの統合を決めた背景には、ユーザー層の変化があるという。高橋氏は、「今の市場を見ると、お客さまの多様化が進んでいる。多様化された市場では、1ブランドで対応するより、複数のブランドでアプローチしていくのが自然な姿」と語る。UQ mobile以外はMVNOのままだが、Webでの獲得に強いBIGLOBEモバイルや、ケーブルテレビの営業力やサポート力を活用できるJ:COM MOBILEといった形で、ユーザー接点ごとのすみ分けも進んでいる。

 グループ全体での基盤を強化することで、まずKDDI全体からの流出を抑止する。同時に、競合のサブブランドやMVNOからの新規獲得も強化できる。また「第3段階として、5Gの高品質通信や体験価値向上を通じて、アップセルを狙う」(高橋氏)という。流出を抑止しつつ、サブブランドでユーザーを増やし、その一部がauに切り替えることで、収益も高めることができる。これが、UQ mobileを統合するKDDIの狙いだ。

UQ mobile 流出抑止、新規ユーザー獲得、auへのアップセルの3段階で基盤を強化する方針

 とはいえ、時系列で見ると、サブブランド戦略に後れを取ったのも事実。UQ mobileにとっての直接的な競合といえるY!mobileは、2019年度にスマートフォンの累計回線数が500万を突破しており、UQ mobileとは2倍以上の開きがある。宮内氏によると、ソフトバンクとY!mobileの2ブランドを扱うショップは、全国で1800店に上り、リアルな販路も2年で1.5倍に増加した。直接的には語れなかったが、UQ mobileの統合は、勢いを増すY!mobileに対抗する構えを本格化させたと見ることができる。

UQ mobile Y!mobileのスマートフォンユーザーは500万を突破している
UQ mobile ソフトバンクとY!mobileの両ブランドを扱う店舗も1800店に達した

 高橋氏の「楽天モバイルのMVNOを離れる方がわれわれに来てもらえるよう、UQを含めて準備が整った」というコメントからは、楽天モバイルを“草刈り場”と考えていることもうかがえた。楽天モバイルは、MVNOの新規契約を自社回線の本格サービス開始前日の4月7日に終了しており、ユーザーにはMNOへの切り替えを促している。

 一方で、楽天モバイルのMNOだけが、ユーザーの移行先になるわけではない。楽天モバイルはMVNOからMNOへの切り替えに限り、MVNOの料金プランをそのまま引き継げるようにしているが、そのまま移行しただけではユーザーにとっての恩恵が少ない。現時点では料金やデータ容量がそのままで、エリアが狭くなってしまうからだ。MVNOの終了時期は未定だが、いずれにせよ、ユーザーの流動性は確実に高まる。こうした事情を踏まえると、今、UQ mobileを強化するのは必然だったといえそうだ。

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう

Let's block ads! (Why?)



"モバイル" - Google ニュース
May 16, 2020 at 04:00AM
https://ift.tt/3bBMxau

KDDIはなぜUQ mobileを統合するのか ターゲットはY!mobileと楽天モバイル? - ITmedia
"モバイル" - Google ニュース
https://ift.tt/2P0XHh5
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update

Bagikan Berita Ini

0 Response to "KDDIはなぜUQ mobileを統合するのか ターゲットはY!mobileと楽天モバイル? - ITmedia"

Post a Comment

Powered by Blogger.