マリーン セル(MARINE SERRE)は、今シーズンのショー会場にパリ19区にあるル・サンキャトルを選んだ。ここは、長年葬儀場として使われたのちに多目的文化センターとして生まれ変わった場所。古着に新たな命を吹き込むことで、無駄に満ちたファッション業界のあり方を見直そうと呼びかける彼女のコレクションを見せるのに、これほどぴったりの場所があるだろうか。
若手デザイナーの支援を目的としたLVMHヤングファッションデザイナー部門で、2017年にグランプリを受賞をしたセルは、2020-21年秋冬シーズンで、コレクションの約50%にアップサイクル素材を使用した。コレクションのテーマに掲げた「Mind, Melange, Motor」は、フランク・ハーバートのSF小説シリーズ『デューン/砂の惑星』が着想源だ。メランジ(Melange)は、同小説に登場する架空の秘薬の名称。「スパイス」とも呼ばれ、意識を高め、寿命を延ばす作業があるとされる。
セルはコレクション制作の中でどのように「服の寿命」を捉え、それを延ばすことができると考えたのか。そして、その結果として私たちユーザーにどんな影響をもたらそうとしているのか。デザイナー本人に、話を聞いた。
問いは継続性から生まれる。
──ショーの招待状は、フランスの紙のお香、パピエダルメニイ(Papier d'Arménie)のような形状でしたね。
自宅でいつもパピエダルメニイの紙のお香を焚いていることから、彼らとコラボレーションを行うことになったの。加えて、今回のコレクションをデザインしはじめたとき、モノが燃え尽きて灰と化したときの姿が頭の中にあって。数日前にInstagramに投稿した2020年春夏コレクション「Marée Noir」の映像の中に、火山噴火のような爆発が起きるインダストリアルな景観の中をモデルが歩くシーンがあるのだけれど、これを2020-21年秋冬コレクションのショーの導入にも用いたわ。
──つまり、昨シーズンから繋がっているということですね?
そうよ。私はいつも、コレクションにつながりを持たせたいと考えているの。物事に流動性を持たせ、創造性の限界を押し広げ、そしてファッションの「定型」と自分の表現方法を見直すためにもね。継続性があることで、自分のものづくりのあり方や業界全体に対して疑問を持つことができるし、自動的に既存のルールに則って制作していると、つい繰り返しの作業になってしまうから。
三日月プリントの焼け痕。
──アマゾンの火災やオーストラリアの山火事なども影響を与えていますか?
現在、地球のいたるところで火災が発生しているけれど、私も2017年にオレゴン州ポートランドを訪れた際、山火事に遭遇したの。車で山越えをしているときに山火事の煙に囲まれてしまい、とても恐ろしい思いをしたわ。私はファッションを利用して、世界で起きているさまざまな問題から逃げることなく議論したい。
前述の映像の終盤では、女性がまるで女神のように、不思議な力で火を消すの。これは、紅海を歩いて渡ったモーセなど、さまざまな歴史物語からインスピレーションを得ているわ。事実を用いながらも、神秘や希望を表現したい。今、世界は危機に瀕している。できる限り迅速に変化をもたらさない限り、その未来は絶望的よ。中には、私をディストピア的だという人がいるけれど、現実的なだけ。どうすれば建設的な議論をはじめることができるのか、そして、こうした状況が二度と起こらないようにするために、私たちがすべきこととは何かを、常に問いかけているの。
──シグネチャーの三日月プリントにも、焼けた痕がありますね。
実際に紙片を燃やし、その画像を使ってデジタルプリントを作成したの。この焼け痕のアイデアは、イエローに染めたアップサイクルデニムにも用いたわ。
「最先端であることは、無駄を出す言い訳にならない」
Photo: Jamie Stoker
──アップサイクルしたアイテムのシルエットは、どのように決めるのでしょう?
これまで繰り返し表現されてきたものを、テーラリングの力でどう変えることができるかに挑戦したの。保護性と機能性を感じてもらえる服にしたかったから、例えば千鳥格子柄のジャケットでは、ドレープがポケットを形成し、明るい色の筒型マフラーを合わせることで、堅い印象を避けることができた。ジャケットにはポケットも付いているから、バッグを持ち歩く必要もないでしょ? それから、「Holy Sisterhood」と名付けたフード付きのパファードレスもつくったわ。
──アップサイクルの実践において、もっとも難しい点は?
いかに魅力的にアップサイクルするかが永遠の課題。今回のコレクションでは、ベルギーから調達したカーペットをドレスにつくり変えたのだけど、Tシャツを着るようにラクに身につけられるアイテムになった。また、刺繍入りの白のコットンクッションカバーから、男性用のドレスとジュラバ(モロッコの伝統衣装)を、デッドストックのレザーとフェイクファーのブランケットからジャケットをつくったの。あと、ニットもたくさんある。例えば3着のプルオーバーを解体し、カバーステッチで縫い合わせてドレスにしたり。最先端かつ創造的であることは、無駄をだす言い訳にはならないということが伝わったら嬉しい。
Photos: Jamie Stoker Text: Liam Freeman
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March 02, 2020 at 05:00PM
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