電池内部で進行する複雑な反応を定量的に分析
物質・材料研究機構(NIMS)は2020年12月、ソフトバンクと共同でリチウム空気電池のサイクル寿命を決める要因を特定することに成功したと発表した。リチウム空気電池内部の複雑な反応を精密に評価する手法を確立したことで可能となった。
リチウム空気電池は、重量エネルギー密度が極めて大きく、ドローンや電気自動車、家庭用蓄電システムなどの用途で期待されている。正極活物質としては空気中の酸素を、負極にはリチウム金属をそれぞれ用いており、現行のリチウムイオン電池に比べ、理論エネルギー密度は数倍にもなるという。
NIMSとソフトバンクは、2018年に「NIMS-SoftBank先端技術開発センター」を共同で設立し、リチウム空気電池の実用化に向けた研究を行っている。こうした中で研究チームは、リチウム空気電池内部で発生する気体や揮発性物質を定量的に評価できる新たな手法を開発した。他の測定手法なども組み合わせることで、電池内部で進行する複雑な反応を定量的に分析することに成功した。特に、電池反応の効率や副反応の詳細を理解するためには、正極の反応物質である酸素の物質収支などを把握することが極めて重要だという。
研究チームは、今回開発した「電池内部の反応を評価する手法」を用い、NIMS-SoftBank先端技術開発センターで試作した実用的なリチウム空気電池の評価を行った。評価に用いた電池は、従来のリチウム空気電池セル構造とは異なり、セパレーターや電解液の量を最小限に抑えた設計となっている。
リチウム空気電池内部の反応を分析した結果、電池のサイクル寿命は、電解液量と面積容量の比率で定義されるパラメーターで支配されることが、初めて明らかになった。例えば、「電解液量を一定に保ちつつ面積容量を減らすとサイクル寿命は延びる」。しかし、「面積容量が減ると電池のエネルギー密度は下がる」といったことが分かった。リチウム空気電池の早期実用化に向けては、これらを考慮した電池設計や材料評価を行うことが重要となる。
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