
2009年に創業したアップサイクルの草分け、ループトワークス社(Looptworks、本社オレゴン州ポートランド)は、デルタ航空で不要になった旧ユニフォーム159トンを、バックやクッションカバーなどの商品に作り替えた。サウスウエスト航空等の機内で使用された革張りのシートは、風合いのある革製品に変身した。最先端の開発企業から、なんらかの理由で採用中止となった上質の素材が、彼らのもとに持ち込まれることもある。同社の哲学と技術を探った。(米ポートランド=山中緑)
アパレル業界にいたグレイ・ペック氏は、日々、膨大な売れ残り在庫や余剰素材が破棄されている現実に危機感を募らせいた。アウトドア業界にいたスコット・ハムリン氏もまた、同様の問題意識を持っていた。そこで二人は、2009年に「すでにあるものだけを材料にする」アップサイクル企業「ループトワークス」を創業した。 アップサイクルとは使用済み品や廃材等を活用して、新たな製品や価値を生むことだ。アップサイクル事業を行うループトワークスでは、通常のリサイクルを「ダウンサイクル」と位置付ける。リサイクルはその工程にエネルギーや資源を要し、コスト高になるのに価値は上がらないからだ。 ループトワークスは企業などで通常なら破棄される素材を、新たな製品に作り替えて社会へ循環させる。デルタ航空の64000人分の旧ユニフォーム、159トンは状態に応じて分別、それぞれ適した製品に作り替えた。手間のかかる分別作業は地元の福祉作業所の協力を得ており、雇用も生み出している。 地元のサッカーチームのユニフォームも、手作業で袋などの小物に生まれ変わった。チームはそれらを、サポーター向けの限定ギフトとして活用した。かつてのユニフォームは今もチームとファンとを繋ぎ、コミュニティを支えている。
サウスウエスト航空やアラスカ航空の革張りのシートを利用した製品群は、新革では味わえない手に馴染む風合いが魅力だ。これまでいくつかの日本企業が取り扱いを申し入れたそうだが、現在のところ日本国内での販売予定はない。 マーケティングディレクターのクレア・ハーリー氏は「私たちはモノを売りたいわけではない」と話す。ループトワークスの使命は、「増え続けるゴミと、地球資源を使い過ぎる」という二つの問題を解決することにある。アップサイクル製品の開発生産は、それらの問題解決方法の一つと位置付ける。 高級電気自動車メーカーから、染色に問題があったという理由で未使用の高級革が持ち込まれたこともあった。ループトワークスは素材を「救出」し、新たな価値に転換して社会に還元する。それと同時に地域と多様性を重視し、循環型社会への実現に貢献している。 ループトワークスの製品はオンラインと、オレゴン州ポートランド市内にある店舗で販売している。店舗の傍らにある工房で、ほぼ全てのデザインや企画を行う。グローバル企業とも協働し、従業員は20人程度の小さな企業ながら、「サーキュラーエコノミー」を力強く牽引している。
山中 緑
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November 25, 2020 at 07:29AM
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