9月17日より、NVIDIAの新世代GPU「GeForce RTX 30シリーズ」の上位モデル「GeForce RTX 3080」の販売が開始される。 【この記事に関する別の画像を見る】 これに先立ち、同GPUを搭載するNVIDIA純正ビデオカード「GeForce RTX 3080 Founders Edition」をテストする機会が得られたので、ベンチマークテストでその性能を確認してみた。 ■8,704基のCUDAコアを備えるGeForce RTX 3080 GeForce RTX 3080は、NVIDIAのAmpereアーキテクチャに基づいて、8nmプロセスで製造されたGPUコア「GA102」を採用するハイエンドGPU。GeForce RTX 30シリーズでは、最上位のGeForce RTX 3090に次ぐ上位モデルに位置している。 GeForce RTX 3080のGA102コアでは、68基のStreaming Multiprocessorが有効化されており、8,704基のCUDAコア、272基の第3世代Tensorコア、68基の第2世代RTコアが利用できる。 VRAMには、19Gbps動作のGDDR6Xメモリを搭載。GPUとメモリ間を320bitのメモリインターフェイスで接続することで、760GB/sの帯域幅を実現した。インターフェイスには、PCI Express 4.0 x16を新採用。ビデオカードの消費電力指標であるTGP(Total Graphics Power)は320W。 ■GeForce RTX 3080 Founders Edition 今回テストするのは、NVIDIA純正ビデオカードであるGeForce RTX 3080 Founders Edition。表裏にファンを備えるGPUクーラーや、従来のPCIe電源コネクタとは異なる12ピン補助電源コネクタを備えるなど、かつてないほどユニークな設計を採用した純正ビデオカードだ。 画面出力端子には、HDMI 2.1(1基)とDisplayPort 1.4a(3基)を搭載。PCIe 8ピン×2系統を12ピン補助電源コネクタに変換するケーブルが付属しているので、既存の電源ユニットでもGeForce RTX 3080 Founders Editionへの電力供給が可能だ。 ■テスト機材 GeForce RTX 3080の比較用には、前世代であるGeForce RTX 20シリーズの最上位モデル「GeForce RTX 2080 Ti」を搭載するビデオカード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Edition」を用意した。 ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 Ti AMP Editionは、GeForce RTX 2080 Tiのブーストクロックを1,545MHzから1,665MHzにオーバークロックして搭載したOCモデルで、パワーリミットもGeForce RTX 2080 Ti Founders Editionと同等の260Wに引き上げられている。 両ビデオカードをテストするベース機材には、PCI Express 4.0に対応するRyzen 9 3950Xを搭載したAMD X570環境を用意した。 グラフィックスドライバは、GeForce RTX 3080がレビュアー用に配布された「456.16」、GeForce RTX 2080 Tiにはテスト時点での最新版である「452.06」を使用した。いずれもゲーマー向けの「Game Ready Driver」である。 そのほかの機材等については以下のとおり。 ■ベンチマーク結果 それではベンチマーク結果をみていこう。 実施したテストは、「3DMark」、「VRMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「Forza Horizon 4」、「フォートナイト」、「レインボーシックス シージ」、「オーバーウォッチ」、「VALORANT」、「バトルフィールドV」、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」、「CONTROL」、「モンスターハンターワールド : アイスボーン」、「アサシン クリード オデッセイ」、「ゴーストリコン ブレイクポイント」、「レッド・デッド・リデンプション 2」。 □3DMark 3DMarkでは、DirectX 12テスト「Time Spy」、DirectX 11テスト「Fire Strike」、DirectX Raytracing(DXR)テスト「Port Royal」を実行した。 GeForce RTX 3080はすべてのテストでGeForce RTX 2080 Tiを上回っており、Time Spyで19~27%、Fire Strikeで13~31%、Port Royalで約30%の差をつけている。 CPUがボトルネックになりにくい高負荷設定ほど、GeForce RTX 2080 Tiとのスコア差が拡大しており、GPU自体の性能でGeForce RTX 2080 Tiを明らかに上回っていることが伺える。 □VRMark VRMarkでは、DirectX 11テスト「Orage Room」、DirectX 12テスト「Cyan Room」、5K解像度テスト「Blue Room」を実行した。 ここでもGeForce RTX 3080がGeForce RTX 2080 Tiを上回っているが、その差はOrange Roomが約2%、Cyan Roomは約9%、Blue Roomで約21%となっている。 GPU依存度の高いBlue Roomでの差はさすがと言ったところだが、それほどGPU負荷の高くないテストではCPUのボトルネックによって、GPUの性能差が十分にスコアに反映されていない。GeForce RTX 3080の性能を「高フレームレート」で引き出すには、CPU側にも相応の性能が求められるということだ。 □ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズベンチマーク ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズベンチマークでは、描画設定を「最高品質」に固定して、フルHDから4K解像度でテストを実行した。 ここでもCPUによるボトルネックが生じており、WQHD解像度以下でGeForce RTX 3080がGeForce RTX 2080 Tiにつけた差は5~6%にとどまっている。4K解像度では約22%差をつけて圧倒していることから、GPU自体の性能差が大きなものであることは疑いない。 □FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、描画設定を「高品質」に固定して、フルHDから4K解像度でテストを実行した。 GeForce RTX 3080はGeForce RTX 2080 Tiに対して、フルHDで約7%、WQHDで約18%、4Kで約23%の差をつけている。 □Forza Horizon 4 Forza Horizon 4では、描画設定を最高の「ウルトラ」に固定して、フルHDから4K解像度でベンチマークモードを実行した。 GeForce RTX 3080はすべての条件でGeForce RTX 2080 Tiを上回っており、その差はフルHDで約3%、WQHDで約8%、4Kで約30%だった。 □フォートナイト フォートナイトでは、描画設定を「最高」に固定して、フルHDから4K解像度でフレームレートを測定した。なお、フォートナイトでは、標準のグラフィックスAPIである「DirectX 11」に加え、ベータ版として実装されている「DirectX 12」の両方をテストした。 DirectX 11では、GeForce RTX 3080がGeForce RTX 2080 Tiに対して、フルHDで約8%、WQHDで約22%、4Kで約41%の差をつけた。平均フレームレートはそれぞれ、181.4fps、158.0fps、97.9fpsを記録しており、最高画質設定でも相当高いフレームレートを記録している。 一方、DirectX 12でのGeForce RTX 3080は、フルHDで約15%、WQHDで約32%、4Kで約38%の差をつけている。平均フレームレートはそれぞれ、203.9fps、162.7fps、86.5fpsを記録した。 DirectX 11ではCPUのボトルネックが大きかった、フルHDやWQHDのフレームレートが向上してGeForce RTX 2080 Tiとの差を広げているが、GPU依存度の高い4K解像度ではDirectX 12の利用で逆にフレームレートが低下している。 もっとも、バトルロイヤルゲームであるフォートナイトは、高フレームレートでの動作が望まれるタイトルであるので、GeForce RTX 3080の性能を引き出したいのであれば、DirectX 12を試してみる価値はありそうだ。 □レインボーシックス シージ レインボーシックス シージでは、描画設定「最高」をベースにレンダリングのスケールを100%に設定し、フルHDから4K解像度でベンチマークモードを実行した。 GeForce RTX 3080は、フルHDで約7%、WQHDで約21%、4Kで約29%の差をつけて、GeForce RTX 2080 Tiを上回った。 平均フレームレートはそれぞれ、352fps、289fps、171fpsで、144Hzクラスのゲーミングディスプレイと組み合わせれば、画質を妥協することなくその表示能力を引き出せる。 □オーバーウォッチ オーバーウォッチでは、描画設定を最高の「エピック」に設定しつつ、レンダー・スケールを100%に固定。フルHDから4K解像度でフレームレートを測定した。 GeForce RTX 3080のアドバンテージは、フルHDで約3%、WQHDで約24%、4Kで約27%だった。 フルHDでは僅差だが、これはCPUのボトルネックが生じているか否か以前に、両GPUともオーバーウォッチの最高フレームレートである300fps付近で動作しているため、平均フレームレートの差が小さくなったものだ。 □VALORANT VALORANTでは、設定可能な描画設定を「高」にして、フルHDから4K解像度でフレームレートを測定した。 ここでもGeForce RTX 3080がGeForce RTX 2080 Tiを上回っているが、その差はフルHDで約1%、WQHDで約2%、4Kで約10%だった。 両GPUとも4K解像度でも400fpsを超える高フレームレートを記録しており、それ以下の画面解像度では明らかにCPUのボトルネックによってフレームレートが頭打ちになっている。 □バトルフィールドV バトルフィールドVでは、DXRによるリアルタイムレイトレーシングを有効にしつつ、描画設定を「最高」に固定。フルHDから4K解像度でフレームレートを測定した。 GeForce RTX 3080は、フルHDで約20%、WQHDで約28%、4Kで約33%、それぞれGeForce RTX 2080 Tiを上回った。 平均フレームレートは4K解像度でも53.9fpsを記録しており、描画設定を調整すれば4K解像度でもリアルタイムレイトレーシングを有効にできる実力が伺える。88fpsを記録したWQHD以下なら、最高画質設定でもレイトレーシングによる高品質な描画を楽しめるだろう。 □シャドウ オブ ザ トゥームレイダー シャドウ オブ ザ トゥームレイダーでは、描画品質「最高」をベースに、DXRを用いるレイトレースドシャドウクオリティを「最高」に設定。フルHDから4K解像度でベンチマークモードを実行した。 GeForce RTX 3080は、フルHDで約15%、WQHDで約30%、4Kで約33%の差をGeForce RTX 2080 Tiにつけている。平均フレームレートはそれぞれ、118fps、96fps、53fpsで、4K解像度でも描画設定を調整すれば60fpsを目指せるレベルにある。 □CONTROL CONTROLでは、描画設定とDXR設定をともに「高」に設定し、フルHDから4K解像度でフレームレートを測定した。また、追加で「DLSS」を有効にした場合のデータも取得している。 DLSS無効時は、フルHDで約37%、WQHDで約36%、4Kで約41%の差をつけて、GeForce RTX 3080がGeForce RTX 2080 Tiを上回った。リアルタイムレイトレーシングを積極的に活用する本タイトルはGPU負荷が高いこともあり、フルHD解像度から両GPUには大きな差がついている。 一方、DLSSを有効にした場合、GeForce RTX 3080のアドバンテージはフルHDで約3%、WQHDで約36%、4Kで約35%となっている。DLSSによって、レンダリング解像度が引き下げられるためGPU負荷が低下して差が縮まった格好だが、フルHD時についてはGPU性能以外の要因によって、110fps弱でフレームレートが頭打ちになっているようだ。 □モンスターハンターワールド : アイスボーン モンスターハンターワールド : アイスボーンでは、描画設定「最高」をベースにしつつ、テクスチャ品質を「High Resolution Texture Pack」に設定。フルHDから4K解像度でフレームレートを測定した。なお、グラフィックスAPIにはDirectX 12を利用している。 GeForce RTX 3080は、フルHDで約14%、WQHDで約31%、4Kで約35%の差をGeForce RTX 2080 Tiにつけている。4K解像度でも60fpsを超えており、高解像度かつ高画質設定でも滑らかな描画でプレイできるだろう。 □アサシン クリード オデッセイ アサシン クリード オデッセイでは、描画設定を「最高」に固定して、フルHDから4K解像度でベンチマークモードを実行した。 ここでのGeForce RTX 3080のリードは、フルHDで約19%、WQHDで約19%、4Kで約29%。平均フレームレートはそれぞれ、100fps、86fps、63fpsで、4K解像度でも60fpsを超えてくるのはさすがと言ったところである。 □ゴーストリコン ブレイクポイント ゴーストリコン ブレイクポイントでは、描画設定を最高の「ウルトラ」に固定して、フルHDから4K解像度でベンチマークモードを実行した。グラフィックスAPIは「Vulkan」を利用している。 GeForce RTX 3080は、フルHDで約17%、WQHDで約30%、4Kで約61%という差をつけてGeForce RTX 2080 Tiを上回った。フレームレートも4K解像度で130fps近い数値を叩き出していることから、ゴーストリコン ブレイクポイントを妥協のない高画質設定で、存分に楽しむことができるだろう。 □レッド・デッド・リデンプション 2 レッド・デッド・リデンプション 2では、描画設定プリセットである「精密度プリセットレベル」を20段階の最大値に固定して、フルHDから4K解像度でベンチマークモードを実行した。グラフィックスAPIは「DirectX 12」を利用している。 GeForce RTX 3080のアドバンテージは、フルHDで約19%、WQHDで約23%、4Kで約28%。平均フレームレートは4K解像度でも64.5fpsを記録しており、高画質設定でも滑らかな描画でゲームを楽しむことが可能だ。 ■消費電力とモニタリングデータ ワットチェッカーを用いて、ベンチマーク実行中のピーク消費電力とアイドル時消費電力を測定した結果が以下のグラフだ。 GeForce RTX 3080のアイドル時消費電力は54Wで、58WだったGeForce RTX 2080 Tiよりやや低い数値となっている。一方、ベンチマークテスト実行中の消費電力は424~523Wで、388~434WであったGeForce RTX 2080 Tiと比べると、とくにGPU負荷の高いテストで100W前後高い数値となっている。 この100W前後という差には、フレームレートの向上に伴って増加するCPUの消費電力も含まれているが、そもそも、TGP 320WのGeForce RTX 3080と、パワーリミット260WのOC版GeForce RTX 2080 Tiでは、前者のほうが消費電力が大きいのは当然だ。 製品の位置づけとしては、最上位であったGeForce RTX 2080 Tiより1ランク下のGPUであるGeForce RTX 3080だが、消費電力に関しては逆に1ランク上のレベルにある点に注意したい。 続いて、ベンチマークテスト実行中にモニタリングソフト「HWiNFO」を使って取得したデータを紹介する。使用したベンチマークテストは「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」で、4K解像度かつ高品質設定で実行した。テスト時の室温は約27℃。 テスト中のモニタリングデータに注目してみると、GeForce RTX 3080は320W弱の電力(GPU Power)を消費しながら、2,000MHz弱のGPUクロックで動作している。このさい、ピークGPU温度は75℃で、ファンスピードは1,800rpm弱まで上昇している。なお、冷却ファンはセミファンレス動作に対応しているため、ベンチマーク開始前は回転が停止している。 TGP 320Wで、実測した消費電力でもGeForce RTX 2080 Tiを上回るGeForce RTX 3080だが、Founders EditionのGPUクーラーが優れていることもあってか、GPU温度やファンスピードは思いのほか低いという印象だ。 ■前世代の最上位モデルを圧倒するGeForce RTX 3080 GeForce RTX 3080は、GeForce RTX 30シリーズにおいて2番手のポジションにあるGPUでありながら、前世代の最上位モデルであるGeForce RTX 2080 Tiを圧倒する性能を発揮した。 GeForce RTX 2080 Tiの後継モデルであってもおかしくない性能を備えながら、109,800円から購入できるというのだから、ハイスペックGPUを欲するゲーマーにとって、GeForce RTX 3080のコストパフォーマンスは魅力的だ。 ただ、製造プロセスが12nmから8nmへシフトしたとは言え、消費電力自体は前世代の最上位GPUより明らかに増加しているため、ケースの換気能力や電源ユニットへの要求はより厳しいものとなる。9月17日のGeForce RTX 3080発売に備えるなら、周辺パーツも相応のもの用意しておきたい。 ■告知 9月16日22時より“KTU”加藤勝明氏と“改造バカ”高橋敏也氏がGeForce RTX 3080をライブ配信で動作検証しています!実際に動作する新世代GPUをいち早くご覧ください(ライブ配信終了後は録画版が自動公開されます)。
PC Watch,三門 修太
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