ソニーモバイルコミュニケーションズのXperiaシリーズとして、初めて5Gに対応したフラグシップモデルが「Xperia 1 II」だ。KDDIからは5月22日に発売され、NTTドコモからも6月18日に発売予定となっている。
特徴的な21:9の4K有機EL画面を前モデルの「Xperia 1」から受け継ぎつつ、カメラには新たに「α」シリーズの操作性や高速連写機能を搭載した。その狙いはどこにあるのか、同社企画部の渡邊浩彰氏、企画部の大谷祥子氏、商品設計部門 機構設計部の櫻井敬久氏、商品設計部門 商品部の和久健二氏に話を聞いた。
初の5G対応を実現しつつ、スリム化を実現
―― Xperia 1 IIの開発にあたって重視したポイントを教えてください。
渡邊氏 前モデルが搭載した21:9の画面は、7割以上のお客さまにご満足いただけました。Xperia 1 IIでは、フォトグラファーや映画愛好家、ゲームプレイヤーなど「好きを極める」ユーザーを想定し、本格的な機能を詰め込みました。その上で、下したのが「サイズは犠牲にしない」という決断です。厚みはXperia 1よりも薄い7mm台を死守することにしました。
―― Xperia 1 IIの5G対応はSub6のみの周波数です。ミリ波への対応はどう考えていますか。
渡邊氏 Xperia 1 IIのターゲットではSub6が向いていると判断しました。ミリ波は障害物があると減衰するため、局地的なニーズがあります。ミリ波に対応したモデルとしては「Xperia PRO」の開発を表明しており、B2Bやソリューションとして差別化した展開を考えています。
和久氏 5Gはまだ黎明(れいめい)期ということもあり、「正解」が分からない中で、パートナーと一緒に開発を進めています。ミリ波についてもパートナーと実施してきたトライアルで技術はありますが、今まで扱ってきた周波数の帯域とは全く違います。アンテナを幾つどう配置するか、どういった商品にするかによって、サイズ感は大きく変わってくるでしょう。
―― ミッドレンジモデルの5G対応はどう考えていますか。
渡邊氏 5Gはまだ始まったばかりです。アーリーアダプターに向けた機能として、まずはフラグシップモデルに搭載しました。ミッドレンジモデルについては、5Gネットワークの展開状況やユーザーニーズを見ながら検討していきます。
レンズ交換式「α」シリーズの高速連写機能を搭載
―― Xperia 1 IIのカメラ機能について、開発コンセプトを教えてください。
渡邊氏 Xperia 1 IIではフォトグラファーをターゲットに、レンズ交換式カメラユーザーにも満足していただけるものを目指しました。「α」シリーズの操作性を再現した「Photography Pro」や、ZEISSによるレンズコーティングを採用しています。
―― ZEISSのコーティングを採用したメリットとは?
渡邊氏 ZEISSのT*(ティースター)コーティングでは、階調や透明感、被写体の微細な質感を表現できます。レンズのフレア、ゴーストを最小限に抑えることで、クリアな描画を得られます。
大谷氏 フレアやゴーストが発生しやすい逆光のシーンでも、忠実な色再現により描写力を高めています。
―― Xperia 1 IIではレンズの焦点距離が16mm、24mm、70mmになりました。
渡邊氏 レンズ交換式カメラでは広角16-35mm、標準24-70mm、望遠70-200mmという、いわゆる「大三元レンズ」が使われています。サイズ感やF値を含めたところも考慮し、レンズ交換式カメラのユーザーが満足する品質を目指して採用しました。
―― 他社スマホでは高倍率ズームの競争が始まっています。
大谷氏 Xperia 1 IIでは70mmの3倍弱となる200mmまでのデジタルズームに対応しています。これ以上、ズーム倍率の数字を伸ばしていくよりは、画質を担保することを優先しました。
―― 動画撮影は4Kにとどまっています。8K動画についてはどう考えますか。
大谷氏 8Kでは大きいピクセル数が必要になります。Xperia 1 IIでは開発段階からピクセル数よりもスピード性能を優先したため、採用は見送りました。
渡邊氏 当社による調査では、人物やペットなど動いている被写体を撮るユーザーが多かったことがスピード性能を優先した理由です。
―― AIを駆使した、SNS映えのする写真についてはどうでしょうか。
大谷氏 Xperia 1 IIでは画質や色味、写実性をとことん突き詰め、シャッタースピード、ISO、ホワイトバランスを任意で操作し、キレイに撮れることを目指しました。フォトグラファー向けの製品として、AIが出してくる写真が優れているとは考えていません。
ただしXperia 1 IIでも、オート撮影で暗所を感知するとノイズリダクション撮影モードになり、重ね合わせ技術によってキレイに撮れます。他社のように専用のナイトモードなどに切り替える必要はありません。
―― Xperiaのカメラが進化しすぎることで、ソニーのカメラ製品が売れなくなることはありませんか。
渡邊氏 画質という点では、αシリーズやRXシリーズなどカメラ製品の方が優れています。Xperiaシリーズはサブ機として常に持ち歩けるので、カメラを持っていないタイミングでも撮り逃しがありません。あるいはソニーのカメラと他社スマホを使っている方にも、αと同じ体験をしていただけます。
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3.5mmイヤフォンジャック「復活」の理由とは
―― カラーバリエーションについて、Xperia 1 IIのパープル色は前モデルとだいぶ印象が変わっています。
渡邊氏 前モデルでは原点回帰としてパープルを採用しました。Xperia 1 IIでは「キャプチャードモーメント」をコンセプトに、ミラーとパープルを掛け合わせた色としました。ミラーには周囲の環境を切り取ったように映ることがありますが、これは20fpsの高速連写で「瞬間を切り取る」意味とかけています。
―― Xperia 1 IIの本体デザインは前モデルより角張っています。意図的なものでしょうか?
櫻井氏 5G対応の初号機として、さまざまなハイスペックを凝縮するということから、一切の無駄を排除し、直線的なデザインとしました。機構設計としては丸みを帯びた方が強度的には有利で、角張った方が不利なのです。テクノロジーフラグシップとして、これまで以上にシミュレーションとデザイン調整を繰り返しました。
―― 3.5mmのイヤフォンジャックを復活させた狙いを教えてください。
渡邊氏 USB Type-Cと3.5mmの変換ケーブルがいらないというメリットもありますが、Xperia 1 IIでは音質にこだわるユーザーを重視しました。変換ケーブルを排除することでチャンネルセパレーションが向上し、ノイズは10分の1に低減できました。
Xperia 1よりも機能を増やしながら薄型化に成功
―― 内部のレイアウトはどう変わったのでしょうか。
櫻井氏 無理難題に苦労しました(笑)。ディスプレイ上部のベゼルでは、前モデルからインカメラのデザインを変えています。スピーカーはフロントに向けましたが、防水などのために幅を取ることになりました。
和久氏 Xperia 1 IIではワイヤレス充電にも対応しました。バッテリー容量は3300mAhから4000mAhになり、体積は増えています。熱設計は、スタックアップ(組み立て)をする前からシミュレーションを繰り返しました。
渡邊氏 Xperia 1よりも機能を増やしつつ、厚さが8.2mmから0.3mmも薄くなったのは本当にすごいなと思っています(笑)。
―― Xperia 1 IIのディスプレイには「90Hz相当」の残像低減技術を採用しました。なぜ90Hzそのものではないのでしょうか。
渡邊氏 現状では4Kのハイフレームレートコンテンツはそろっていません。4Kは情報量が大きく、90Hz駆動は技術課題も多いのです。一方、主にゲーム用途では残像低減のニーズは高いため、さまざまなバランスを検討してオーバードライブによる残像低減としました。
―― 国内でXperia 1 IIの発売はなぜ遅れたのでしょうか。「Photography Pro」に不具合が出たとのウワサもあるようですが。
渡邊氏 本格的なカメラユーザーを満足させることを目指し、社内の高度な品質基準を満たすことを優先しました。発売時期に関して弊社がお答えする立場にはありませんが、開発自体に問題があったというわけではありません。
―― Xperia 1 Professional Editionのように、SIMフリーでの展開はありますか。
渡邊氏 ユーザーニーズも見ながら、検討していきます。
取材を終えて:初の5G対応と薄型化という課題を両立
5G対応スマホでは、アンテナの追加や発熱対策、バッテリー増量などの必要性から、最初のモデルではある程度のサイズアップが避けられないものと筆者は予想していた。
だが、Xperia 1 IIでは5G対応やバッテリー増量、ワイヤレス充電やイヤフォンジャックの追加を実現しつつ、前モデルより薄くなったのは驚きだ。その裏では、開発陣がさまざまな工夫を重ねたことが伝わってきた。
また、カメラは単に業界トレンドを追うのではなく、レンズ交換式「α」シリーズとの連携を図っている。定評あるカメラ製品を持つ、ソニーならではの強みを生かしてきたことに注目したい。
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