日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)が、安全対策の新規制基準を満たしたとして、原子力規制委員会の審査に事実上合格した。今後、一般からの意見公募や設備の詳細をまとめた工事計画審査などの手続きが続くものの、稼働に向けた一つの節目を越えたことになる。
再処理工場は、全国の原子力発電所から集めた使用済み核燃料を切断して化学処理し、再利用できるプルトニウムとウランを取り出す施設。これらを混合酸化物(MOX)燃料に加工して原発で燃やす、国の「核燃料サイクル政策」の中核的な役割を担う。
だが、肝心の核燃料サイクル政策はいま、行き詰まりの状態だ。再処理工場の稼働で得られる年間最大8トンのプルトニウムを消費する発電の体制が整っていないことに加え、核不拡散や経済性の観点からも課題があり、再処理事業をこのまま進める意義は見いだしにくい、と言わざるを得ない。政府と電力業界は、現実を見つめ政策の在り方を検証する必要がある。
サイクル政策は本来、MOX燃料を高速増殖炉で使うことで核燃料を節約する狙いがあった。ところが、その主軸とされた原型炉「もんじゅ」は研究段階でトラブルが続いて2016年に廃炉となり、開発が滞ったままだ。もう一つのMOX燃料の使い道であるプルサーマル発電を担う原発も、東日本大震災後に実施したのは九州電力玄海原発3号機(佐賀県)など4基にとどまり、電力業界が目指す16~18基には遠く及ばない。
MOX燃料利用の道筋がないまま再処理事業を続ければ、核兵器に転用可能なプルトニウムを、既に国内外で日本が持つ約46トンも含めて大量に保有することになる。核保有の意思を疑われ、国際社会から批判を招く懸念もある。
経済負担の問題もある。再処理工場は1993年に着工。97年に完成予定だったが、トラブルなどで計24回延期され、建設費は当初見込みから大きく膨らんだ。完成後の運営費などを含めた総事業費は13兆9千億円に上る見通しだ。電力会社が拠出する費用は、最終的に電気料金に上乗せされる。無理な政策のツケを国民に回すようなことは避けるべきだ。
一方、国内各地の原発には計約1万5千トンの使用済み核燃料が保管されており、施設内の燃料プールの容量が限界に近いところもあるという。年間800トンの処理能力がある再処理工場が稼働しなければ、使用済み核燃料が行き場を失い、原発によっては運転ができなくなる恐れもある。このことが、国や業界が核燃料サイクル政策の推進を掲げる大きな理由の一つとされる。
しかし、サイクル政策をこのまま維持することは問題の先送りでしかない。政府は使用済み核燃料の処分や安全確保など、原発が抱える課題と正面から向き合い、政策転換も含めて新たな歩みを進めるべきだ。責任ある原子力行政と、将来を見据えたエネルギー政策が求められる。
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May 17, 2020 at 07:45AM
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核燃料サイクル政策 現実に沿った検証が必要 | 社説 | コラム - 熊本日日新聞
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