日本HPの「HP ZBook Firefly 14 G7 Mobile Workstation」は、14型の4K液晶ディスプレイを搭載したモバイルワークステーションだ。オフィスパワーユーザー、クリエイター、建築&デザイナーなどをターゲットとして意識し、可搬性の高い筐体に充実のスペックを凝縮している。
今回は3種類のベースモデルのうち最上位のハイパフォーマンスモデルを入手したのでレビューしよう。
スリムな筐体にハイスペックを凝縮
本製品のスペックを表にまとめた。CPUには6コアのCore i7-10810U、32GBメモリ、2TBのPCI Express SSD、グラフィックス機能には、プロユース向けのQuadro P520(ビデオメモリ4GB)と豪華な基本スペックが目をひく。さらに、高輝度広色域高解像度の液晶ディスプレイ、Wi-Fi 6対応無線LAN、2基のThunderbolt 3を搭載するなどスキのない内容となっている。
【表1】HP ZBook Firefly 14 G7 Mobile Workstation(ハイパフォーマンスモデル)のスペック | |
---|---|
CPU | Core i7-10810U (6コア12スレッド、1.1~4.9GHz) |
メモリ | 32GB(DDR4-2666 オンボード) |
SSD | 2TB NVMe SSD(PCI Express 3.0x4) |
グラフィックス機能 | Quadro P520(4GB)、Intel UHD Graphics |
ディスプレイ | 14型IPS液晶ディスプレイ、sRGB95%、非光沢、DisplayHDR400対応、最大550cd/平方m |
表示解像度 | 3,840×2,160ドット |
カメラ | 開閉式スライドカバーつきWebカメラ(720p)、Windows Hello顔認証対応IRカメラ |
インターフェイス | Thunderbolt 3×2、USB 3.0×2、ヘッドセット、HDMI、セキュリティロックスロット |
通信機能 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5、Gigabit Ethernet(USB Type-C用アダプタで同梱) |
バッテリ駆動時間 | 約14.7時間 |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 323×214.6×17.9mm |
重量 | 約1.4kg |
OS | Windows 10 Pro |
税別直販価格 | 298,000円 |
業務用にも耐えるsRGB 95%の4K液晶ディスプレイ
起動してまず感じるのが、3,840×2,160ドット(4K UHD)に対応した14型画面の表示品質。明るく精細で発色も良く、非光沢仕上げでありながら鮮やかで、ひと目で高品質なディスプレイだとわかる。
VESAが定めるHDR向け液晶ディスプレイの規格であるDisplayHDR 400に対応しており、最大輝度は550cd/平方mと明るい。インターネットコンテンツの標準であるsRGBの色域を95%カバーする。
エックスライトのカラーキャリブレーションセンサー「i1 Display Pro」で測定した結果、輝度こそ公称値より少し低めの470cd/平方mだったが、コントラスト比が5,326:1、色域はsRGB比約100%(カバー率約99%)と公称値を上回っていた。
設計、クリエイティブのプロユースにも耐える品質だが、ビジネス用途でも気分よく使うことができるだろう。IPSパネルを採用しており視野角も広いので、他人に画面を見せて情報を共有するような場面にも活躍する。
6コアCPUとQuadro GPUを搭載
CPUは、Core i7-10810Uを搭載。モバイル向けの第10世代Coreプロセッサ(開発コードネーム : Comet Lake)のなかではもっとも高性能な6コア12スレッドのCPUだ。32GBメモリ、2TBのPCI Express SSDと合わせて、モバイルパソコンとしては最高クラスの性能が期待できる。
また、外部GPUとしてQuadro P520(4GB)を搭載している。CUDAコアの数で言えば、GeForce MX250相当なので描画性能はエントリーレベルだが、ビデオメモリが2GBではなく4GBある点はCUDAアクセラレーションを利用するうえで有利だろう。ハードウェアエンコーダのNVENCは搭載しない。
さらに、業務用のグラフィックス/設計ツールを想定したOpen GLへの最適化とそれら業務用ツールのISV認証(ソフトウェアベンダーによる安定動作、描画の再現性認証)をGPUレベルで取得しているのは、GeForceにはないQuadroの強みだ。描画の再現性が重要で、Quadroシリーズの利用が必須とされている工業デザイン、建築設計などの業務にも対応できる。
品質の高いキーボード、インターフェイスも充実
ワークステーションというだけあってキーボードの品質も非常に高い。ゆったりとした配置でスイッチの感触も絶妙に調整されており、とても打ちやすいキーボードだと感じる。防滴仕様でキーボードバックライトも搭載している。
通信機能はWi-Fi 6とBluetooth 5.0を標準装備。有線LAN(Gigabit Ethernet対応)は、本体には装備しないが、USB Type-Cアダプタを同梱して対応している。
Thunderbolt 3(USB Type-C)、USB 3.0(Type-A)を2基ずつ装備。外付け周辺機器とのデータのやりとりを高速に行なうことができる。また、業務利用を意識してか、スマートカードリーダを標準で搭載している。
ベンチマークテストで高性能を実証
ベンチマークテストの結果を掲載する。参考までに筆者所有のThinkPad T480s(2018年モデル)の結果も合わせて掲載した。
HP ZBook Firefly 14 G7 Mobile Workstation (ハイパフォーマンスモデル) |
ThinkPad T480s | |
---|---|---|
CPU | Core i7-10810U | Core i5-8250U |
メモリ | DDR4-2400 16GB×2 | DDR4-2400 4GB+16GB |
ストレージ | キオクシア KXG60PNV2T04(2TB、PCI Express 3.0 x4) | WD Blue 3D NAND SATA SSD(1TB) |
グラフィックス機能 | Quadro P520(4GB) | Intel UHD Graphics 620(CPU内蔵) |
OS | Windows 10 Pro(2004) | Windows 10 Pro(2004) |
備考 | - | 2019年2月購入(2018年発売モデル) メモリ増設、SSD交換 |
HP ZBook Firefly 14 G7 Mobile Workstation |
ThinkPad T480s | |
---|---|---|
Cinebench R20 | ||
CPU(cb) | 1,967 | 1,201 |
CPUシングルコア(cb) | 428 | 348 |
PCMark 10 | ||
PCMark 10 | 3,965 | 3,642 |
Essential | 7,885 | 7,539 |
Productivity | 6,606 | 5,676 |
Digital Content Creation | 3,247 | 3,064 |
PCMark 10 MODERN OFFICE BATTERY LIFE | ||
駆動時間 | 7時間14分 | - |
Battery Life Performance | 5,715 | - |
3DMark | ||
FireStrike | 2,951 | 1,054 |
Graphics | 3,178 | 1,127 |
Physics | 15,122 | 8,384 |
Combined | 1,077 | 377 |
SkyDiver | 10,152 | 4,596 |
Graphics | 10,955 | 4,221 |
Physics | 9,916 | 8,401 |
Combined | 11,019 | 4,541 |
FINAL FANTASY XIV : 漆黒のヴィランズベンチマーク | ||
1,280×720/ノートPC標準/ウィンドウ | 12,984 | 3,758 |
ローディングタイム(秒) | 13.148 | 47.158 |
1,920×1,080/ノートPC標準/フルスクリーン | 7,446 | - |
ローディングタイム(秒) | 12.446 | - |
Premiere Pro CC(秒) | ||
4Kプロジェクト書き出し(HW、H.264) | 580 | 1,643 |
Cinebench R20のスコアは1,967。6コアのCore i7-10810UやCore i7-10710Uを搭載する製品のなかには独自にTurboモードなどを用意してさらに良いスコアを出すモデルもあるにはあるが、4コア8スレッドのCore i5-8250Uを搭載するThinkPad T480sに対して1.6倍以上のスコアであり、十分に6コアCPUの性能を引き出していると言えるだろう。
シングルスレッドでレンダリングをするCPUシングルコアのスコアでもThinkPad T480s比で22%アップのスコアと、ライトユースでも違いが実感できるほどの差をつけている。
システムの総合性能を見るPCMark 10でも順当に良いスコアが出ている。DirectXベースの3D描画性能を見る3DMarkのスコアは、GeForce MX250搭載機に比べると若干落ちるものの、DirectXに最適化されているGeForceとOpen GLに最適化されているQuadroの違いが出ているのだろう。
ビデオ編集ソフトのPremiere Pro CCでは4Kの8本のビデオクリップを編集した約5分間のプロジェクトを書き出した。Quadro P520もNVENCは搭載しておらず、Premiere Pro CCの推奨GPUには足りないが、比較対象のThinkPad T480sに圧勝している。カラーグレーディング(プリセット3D LUTの適用)を行ない、各ビデオクリップの先頭にテロップも挿入するなど少し凝った内容だったためか比較対象には荷が重すぎたようだ。
ワンランク上の体験ができるモバイルワークステーション
HP ZBook Firefly 14 G7 Mobile Workstationの魅力は、トータル体験の高さだ。剛性感、上質感に優れた筐体に美しい画面、快適なレスポンス。キーボードもとても快適だ。カバーつきのWebカメラやノイズ除去機能つきマイクなどテレワークとの相性が良い機能も完備している。ビジネス向けの高性能パソコンとしては文句のない仕上がり。このようなパソコンで在宅ワークができたら生産性が上がることは間違いないと感じる。
ワークステーションというと、CADや動画編集などを連想するかもしれないが、そうした業務で酷使するメインマシンとしてはパワー不足。サブパソコンとして一時的な在宅ワークや取引先での作業用、打ち合わせ用などに持ち運べるパソコンが欲しい場合には適任だ。とくに、CADを利用するユーザーは、GeForceでなくQuadroを搭載している点が強みになると思われる。
実売価格は、評価機の構成(ハイパフォーマンスモデル)で298,000円。高価ではあるが、内容からするととくに割高とは感じない。スペックの異なるバリエーションモデルは185,000円から用意されている。パソコンとしてのトータルな体験が優れているので、用途にかぎらず、高性能なモバイルパソコンがほしいユーザーならば検討する価値があるだろう。
"モバイル" - Google ニュース
October 15, 2020 at 04:55AM
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