<そもそもアメリカが日韓GSOMIAの継続を望んでいることは、当初から分かっていたことだった>
今後の対米・対日関係の成り行きに、韓国が緊張している。
保守系全国紙の東亜日報、朝鮮日報、中央日報は揃って、日本経済新聞(2日付)が掲載したマーク・ナッパー米国務省副次官補(韓国・日本担当)のインタビューと、読売新聞(同)のジョセフ・ヤング駐日米国臨時代理大使のインタビューに言及した。
両氏のインタビューはともに、韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了(破棄)を宣言したことについて、撤回を求める内容だ。GSOMIAは今月22日いっぱいで期限切れとなる。
特に朝鮮日報は、「GSOMIA問題を直接扱う米政府の中心的官僚2人が別の日本の新聞とのインタビューで『GSOMIA維持』を強調したのは、『米国は韓国の味方をしない』というメッセージと解釈できる」とまで分析している。
そもそも、米国が日韓のGSOMIAが維持されるのを熱望していたことは、当初からわかっていたことだった。それを振り切って韓国の文在寅政権がGSOMIA破棄を宣言したのは、GSOMIAを人質に取り、歴史問題への報復として発動した輸出規制措置を日本が撤回するよう、米国に説得させようと思ったからだ。
しかし、それが裏目に出たことは早々に判明した。米国が異例に強い表現で、繰り返し韓国に抗議したのだ。もはや文在寅政権としては、早めにGSOMIA破棄を撤回する口実を見つけ、米国との対立を終わらせるのが得策と言える。
ところがだ。東亜日報によると、青瓦台(韓国大統領府)は「日本が韓日対立の解決に消極的な態度であるため、輸出規制強化の解決がないGSOMIA延長は『絶対不可』の方針を固めている」という。日本と韓国のどちらが正しいかを棚に上げて論じたとしても、これほどの愚策はない。
<参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感>
なぜなら日本としては、韓国がGSOMIA破棄に固執してくれるほど、米国を自分の側に引き寄せることができるからだ。
結局、文在寅政権がGSOMIA破棄を撤回できないのは、国内の支持者に対して説明がつかないからであり、つまりは与党の再選を優先する党利党略なのだ。国民の利益も日米との安保協調も二の次、三の次だ。予定通りGSOMIAが破棄され、それが浮き彫りになった場合、米国が韓国に対してどのような圧力を行使するかは、過去の猛烈な非難を振り返ればおのずと想像がつく。
<参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く>
[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。
※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。
2019-11-05 07:20:00Z
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/post-13328.php
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